G線上の魔王 感想 ネタバレ注意

 ずっと前に断念していたゲームを押入れの奥から引っ張り出してやっていました。

 椿姫ルートだけはクリアしたのですが、問題解決→Hシーンの流れが余りにも不自然過ぎてやめてしまいました。今さらプレイしようと思った理由ですが、「ぬきたし」の体験版にて、エロゲ特有のHシーンに至る過程の短さに主人公がキレるシーンがあり、「自分が感じていた違和感はあるあるだったんだな」と笑えるようになったからです。

 

感想(ハルルート)

 全く飽きが来ないシナリオでした。日常パートで散りばめられた伏線の回収も見事でしたし、ー命をかけた、純愛ーのフレーズに恥じないサスペンスなシナリオ展開でした

 

  • 主人公と魔王の対比

 主人公は借金取りから母親を守るため、その借金取りのヤクザの手下となって働くのですが、最近のアニメゲームの主人公にはあまり見られない、結構重い宿命を負った主人公だと思います。父親は借金をつくり、さらに4人を殺害した罪で投獄され、兄はテロで死に、母親はストーリー中盤で交通事故で死にます。ここまで悲惨な境遇でありながら、決して諦めずお金を貯め、学園にも通ってひょうきんな学生を演じるというのは、かなりの強靭な精神力を持っていることが推察できます。シナリオ中では、ハルと魔王の対決がクローズアップされがちですが、主人公に焦点を当てたシーンが少ないのは少し残念でした。

 

 主人公たちに敵対する魔王の正体は、死んだと思われた主人公の兄だったわけですが、その目的はクーデターを起こし、超法規的措置により父親を釈放させることにあります。この魔王は借金を返すためにヤクザの手下になった主人公を憎んでいるわけですが、この言い分は通らないと思います。借金に苦しむ母親と主人公を残して海外に旅立ち、やらなくてもいいテロ活動に興じている間、幼い主人公は母親を守るため必死にお金を稼ごうとしているわけであり、「母親を守ってくれてありがとう」と魔王が感謝することはあっても、主人公を憎むのはお門違いだと思います。主人公と魔王が対立しないとそもそもシナリオとして成り立たないので仕方ないですが…

 

 最終的に兄が釈放させた父親は死んでしまいます。魔王の最後の目的は、自分を主人公かハルのどちらかに殺させ、殺人という罪を犯させることにあり、冷静さを失って魔王を殺そうとしたハルより先に主人公が魔王を殺し、主人公は投獄されてしまうのですが、安易にハッピーエンドにしない所が名作と言われる所以だと思います。魔王はそもそも大犯罪者でありますし、仕方がなかったとは言え悪事に手を染めた主人公も、やはりどちらも幸せにはなってはいけないと思います。その上で最後ハルと自分の子供に会うという展開は、鳥肌モノでした。破壊することで父親を救おうとした魔王と、罪を被ってでもハルを救おうとした主人公、その対比は見事でした。

 

  • サブキャラクター

 主人公の義理の父親であり、借金取りの権三は、主人公視点でかなりの悪人だと描写されていますが、意外といい人なのかも…? 主人公が有能だったから優しかっただけなのかと思いきや、魔王の狙撃から主人公をかばって死んでしまいます。結局その理由までは分かりませんでした。

 

 主人公の親友である栄一はゲスだど憎めないやつでした。暴動が起きた街で襲う側に回ってるんじゃないのかと思いきや、主人公を助けてくれる辺り、根はいい奴なんだと思います。

 

 実は魔王の手先だった時田ユキ。人質事件が起きた際に、得意げに交渉のあれこれを教えてくれますが、実はその事件の協力者だったというオチには笑いました。よくもまあつらつらと語れたなと思いました。

 

 シナリオゲーとして完成度は高かったと思います。しかしぶっちゃけエロ要素はオマケ程度であり、女の子とイチャイチャするシーンは皆無と言ってもいいでしょう。細部まで作りこまれた作品で、発売から時間が経った今でも引き込まれる、文句無しの名作だと思います。